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東電、都市ガス製造へ、50億円投資、自由化備え自前設備

2016.06.21

 東京電力ホールディングス(HD)は家庭向けの都市ガス製造に乗り出す。一部の工程を外部委託していたが、50億円程度を投じて千葉に設備を新規に導入。自前で一貫生産できる体制を整える。今春の電力に続き、2017年春には家庭向けの都市ガス小売りも自由化する。機動的にガスを販売できるようにし、東京ガスなどに電力契約で奪われた収入を補う。
 東電HD傘下の姉崎火力発電所(千葉県市原市)の構内に熱量調整(熱調)設備を初めて建設する。都市ガスは家庭に送り届ける前に発熱量や圧力、成分の比率が一定になるよう少量のLPガスを混合するなどして調整する必要がある。
 東電は工場など大口向けには既にガスを販売しており、大半は熱調せず「生ガス」で供給している。ガス供給会社に卸売りしている一部のガスは東ガスに熱調作業を委託してきた。東電は輸入した液化天然ガス(LNG)の品質を均一にする工程を自前で担い、コストを下げながら家庭向けの小売りに参入する。
 東電の大口向けガス販売は現在、年間130万トン(LNG換算)程度で売上高は約1200億円。23年度までに家庭用も含め販売量を100万トン増やす計画だ。このうちの一定量を家庭向けが占める。新設する熱調設備で家庭向けの販売増に対応する。
 4月に始まった電力自由化で、東電はガス会社など新規参入企業に電力契約を奪われている。家庭向けガス小売り参入により、電気とのセット販売などを打ち出して巻き返したい考えだ。
 家庭向けにはガス会社への卸供給も強化する。5月には日本瓦斯に年間約24万トンの都市ガスを卸供給する契約を結んだ。一般家庭で30万件に相当する。
 東ガスの家庭向けの顧客は関東地方で1000万件以上で、攻め込む東電も一定の比率の顧客を確保することになる。東電は千葉に顧客基盤を持つ京葉ガス、大多喜ガス両社への卸売りを拡大する可能性もある。
 東電は発電所の燃料用にLNGを大量輸入している。中部電力と燃料調達事業を来月統合する予定で、LNG調達量は年4千万トンと世界最大規模になる。調達規模を生かして価格競争力を引き上げ、家庭向けサービスの拡充につなげる。
 
 
 日本経済新聞 朝刊,2016/06/14,ページ:14