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共通ポイント――囲い込み効果薄れる(横山斉理の目)

2016.04.25

 ポイントカードを導入する目的は顧客を囲い込むことだ。店側が来店客にカードを配布し、購買金額ごとに一定のポイントがたまる。たまったポイントは次回以降に支払いに使うことができたり、ポイントを使って追加的なサービスを利用できたりする。つまり、ポイント付与は、実質的な値下げで顧客を囲い込もうとする試みである。
 企業がそうする理由は、経済全体の大きな成長が見込めないなかで維持・存続していくためには特定の顧客に継続して購買してもらう必要があるからだ。継続利用は新規顧客を獲得するよりコストが少ない。
 しかしポイントカードは購買履歴など顧客データの把握には役立つが、顧客を囲い込むという効果は急速に失われつつある。誰もがポイントカードの会員になれるため、ポイントカードそのものが世の中にあふれているからである。
 消費者は財布やカード入れの物理的な収納スペースの問題で、所持しているポイントカードすべてを持ち歩くことはできない。この場合、自分の行動範囲や好みを考慮した上で厳選したカードを何枚か持ち歩くことになる。幸運にも、財布あるいはカード入れのレギュラーとなったカードを発行した店舗(企業)は、めでたく顧客の囲い込みができるようになる。
 しかし、Tカード(2003年から)やPonta(ポンタ)カード(10年から)、あるいはRポイントカード(14年から)のように、さまざまな加盟店で共通ポイントをためることができるサービスが定着し、今後さらに普及していくと、どこで何を購入しても、所持している何らかのカードにポイントがつく、という現象が起きるようになる。
 消費者にとっては持ち歩くカードの枚数が減るので助かるが、「ポイントがつくのでこの店に行こう」といった、当初の目的である顧客の囲い込みはほとんど期待できなくなる。
 ポイントの付与は、もともとは自店舗を愛顧してくれるお客さん個人に店側が誠意を表すための行為であったはずである。そうであるからこそ、顧客側はその店を継続して利用しようという気持ちになる。誰もがポイントカードの会員になれる世の中、あらゆる製品・サービスにポイントがつく世の中ではおもてなしの気持ちなどの情緒面を含め事業者側が提供する価値がますます重要になる。
 
 
 日経産業新聞,2016/04/21,ページ:15