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東ガス「新電力で首位に」、広瀬社長、家庭向け参入で、営業に器具販売網活用。

2016.04.18

 4月から家庭向け電力小売りに参入した東京ガスは14日、2016年度に電気で40万件の顧客獲得を目指すと発表した。グループのガス器具販売店の営業力を最大限に活用する。記者会見した広瀬道明社長は家庭向けで「新電力で首位を目指す」と語った。もっとも同社の視線は17年のガス小売り自由化だ。電力で収益基盤をどこまで確保できるかが、本業の足場を固める経営資源となる。
 東ガスの電気契約数は4日時点で24万2千件に上る。ほかの新電力では、JXエネルギーが10万件超、関西では大阪ガスが11万件以上。新電力では現時点で東ガスが最も顧客を獲得している。
 広瀬社長は顧客獲得数について「時間も労力もギリギリの状況でやっている。現場は頑張ってくれているが、新規顧客獲得は大変だと改めて実感している」と語った。
 東ガスは関東に200以上あるグループのガス器具販売店の販売網をベースに、訪問営業に力を入れている。
 15年末に他社に先駆けて電気料金メニューを発表した後、2月には追加値下げを発表し、割安感を打ち出したことも奏功したようだ。ただ、4月からの全面自由化の対象となる家庭など低圧契約者のうち、新メニューへ切り替えた世帯は現時点では1%未満にとどまっている。
 東ガスは引き続き訪問営業を徹底して顧客獲得数を伸ばし、20年までには首都圏需要の約1割を確保したい考えだ。
 一方、東ガスにとっての懸念材料は、17年のガス小売り全面自由化だ。すでに東京電力ホールディングス傘下の小売会社がガス小売り参入を表明しており、電力自由化と同様に競争激化が見込まれる。1100万件程度のガス顧客を持つ東ガスは顧客の囲い込みを進めることになる。
 広瀬社長は「ガス新規参入に向けた他社の準備は相当始まっているようだ。東ガスに遅れがあるようであれば、対策を加速させる必要がある」と話した。
 ガスと電気のセット割引などを通じて顧客を確保するほか、電気事業で収益基盤を固めることが重要な経営課題となる。同社では長期的にはガス契約が2~3割程度奪われることも想定して経営戦略を練るという。
 16年度は東ガスにとって、電力小売りでの攻めとガス小売りでの守りを両にらみで進める重要な年となりそうだ。
 
 
 日経産業新聞,2016/04/15,ページ:11