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北関東の電力需要開拓、シナジアパワー武山社長に聞く、東北電・東ガスの販路活用、産業用特高・高圧に特化。

2016.04.11

 東北電力と東京ガスが折半出資するシナジアパワー(東京・台東)が4月、電力供給を始めた。両社がこれまで培ってきた営業網を生かし、北関東を中心とした産業向け電力需要を開拓する。地域や業種を越えた企業連携で電力自由化時代に攻勢をかける。東北電出身の武山徳彦社長に今後の戦略を聞いた。
 ――シナジアパワーの事業や組織の状況を教えてください。
 「2015年10月に設立し、経産省より12月末に小売電気事業者に登録された。まだ会社を設立していない当時から電力契約の提案をしてほしいとの声をいただき、数千キロワット規模で成約した案件もある。3月末時点では約1万キロワットの契約を獲得し、16年の4月から電力の供給を始めた」
 「取締役4人の体制で運営している。昨年10月時点では11人だったが、4月に2人増員したことも含めて14人体制となっている。人員は東北電と東ガスで営業販売を経験した人が集まっている」
 ――東北電と東ガスにとってシナジアで事業を手掛ける意義は。
 「東北電にとっては域外供給の事業を拡大するきっかけとなる。関東を商圏としてきた東ガスにとっても電力小売事業の拡大につながる。東北電と東ガスの安定した電源から供給する電力をバランス良く調達できるため、営業時間が長い商業施設や工場などに積極的に売り込んでいきたい」
 「料金等については相対で契約するが、顧客のエネルギーコストの削減につながる提案が出来なければ意味がない。4~5年後には数十万キロワット供給することが目標だ」
 ――なぜ営業エリアとして北関東を選んだのですか。
 「北関東地域には工業団地が数多くあり商業施設もたくさんある。東ガスはすでにガス事業で商圏としていたため営業網がある。東北電にとっても北関東は見方を変えれば南東北だ。東北電のエリアで事業を手掛ける製造業や流通業者が北関東に拠点を持つことが多い。そのつながりを生かして電力供給を売り込んでいきたい」
 ――家庭向け小売りへの参入や営業エリアを拡大する可能性は。
 「シナジアパワーは産業用の特高・高圧に特化して事業展開する。営業エリアは長期的に見れば関東圏を考えているが、現段階では北関東だけでも需要は大きい。北関東に営業資源を投入していきたい」
 「ただ決して自前で全てやろうとは思っていない。顧客が電力関連で困っていることへの対応やサービス事業に関しては親会社の関係会社などと連携しながら手掛けていきたいと考えている」
小売り自由化で
異業種連携加速
 4月に一般家庭向けなど電力小売りが全面自由化した。資源エネルギー庁に登録された小売電気事業者は280社に及び、業種や地域の垣根を越えたエネルギー競争時代を迎えている。
 シナジアパワーが手掛ける特高・高圧はすでに電力小売りが4月以前から自由化されていた分野だが、東北電と東ガスという地域の異なるエネルギー大手が組んだ意義は大きい。大手も地域戦略や業態自体の戦略を見直し事業拡大にかじを切ったからだ。東京電力が域外電力販売でソフトバンクと組むなど、これまでなかった企業間の連携が加速している。
 17年にはガス小売りも自由化を迎える。自社の顧客囲い込みと域外の顧客取り込みには提携戦略が大きく影響しそうだ。
 
 
 日経産業新聞,2016/04/08,ページ:11