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東電新料金、新電力に対抗、最大5%安で同水準、各社、割引プラン複雑に。

2016.01.12

 4月の電力小売り全面自由化に向け、東京電力が7日、新料金プランを発表した。電気使用量が多いファミリー層向けに現行より最大5%程度安くするプランなどを設定。東京ガスなど新規参入組とほぼ同水準の価格で、顧客獲得競争は激しさを増す。消費者が電気の購入先を自由に選べるようになるが、各社はセット割引など複雑な料金体系を分かりやすく示すことを求められそうだ。 年1万円節約も
 中部電力や関西電力も近く、新料金を公表する。東電の料金体系を目安として新電力各社がさらに料金を引き下げる可能性もある。家族の人数や暮らし方にもよるが、年間で数千円から1万円以上の電気代削減につながるケースも出てくる。
 「関東で競争が激しくなることは覚悟している。事業エリアを全国に広げ、一挑戦者として突き進む」。東電が同日開いた記者会見で小早川智明常務執行役は、先行して料金メニューを打ち出して「東電より割安」なことをアピールしてきた新電力への対抗心をあらわにした。
 電気使用量や使用する時間帯に応じて選べる10種類以上のプランを用意。8日以降順次契約を受け付ける。4月からは関電や中部電管内にもサービスエリアを広げる。
 目玉は「プレミアムプラン」だ。これまで電気代が月1万7千円以上と、電気をよく使う世帯向けだ。3月末までに2年契約で申し込めば、4LDKの戸建て4人家族の場合で、2年間の電気代が現行より3万円弱(ポイントサービス含む)安くなる。ソフトバンクや日本瓦斯など提携先のサービスと組み合わせれば、携帯電話料金やLPガス料金を含めた負担をより軽くできる。
「追加あり得る」
 対象となるのは東電が現在契約している2千万件の1割程度だが、「お得意様」は何としても囲い込んでおきたい。東ガスや東燃ゼネラル石油は「他社の動向を見極め、追加プランを出すこともあり得る」としており、東電を指標に料金競争に拍車がかかりそうだ。
 もっとも消費者に同じように恩恵が行き渡るわけではない。東電のプレミアムプランの対象世帯では月額電気料金の下げ幅は5%(1200円)程度になるが、電気使用量が少ないより標準的な世帯では1%(100円)程度にとどまる。
 使用量が多い世帯を取り込みたいのは新電力も同じだ。東ガスやジュピターテレコムも、それぞれの都市ガスやCATVの契約家庭の中から電気の使用量の多い世帯を中心に割引する料金体系にしている。
 電気代への消費者の関心は高く、電気と様々なサービスを組み合わせたセット割引への期待は大きい。だが、そのために料金体系はこれまで以上に複雑になっている。セットにすることで料金内容が不明確になることや、複数のサービスを1回に契約するため解約や契約切り替えがしにくくなるとの懸念もある。
 東電は新料金プランについて「できるだけ分かりやすくなるよう工夫したつもりだが、顧客の声を聞いて見直していきたい」(佐藤梨江子執行役員)としている。
 どんなにきめ細かいプランを用意しても、消費者が理解しにくいものなら敬遠され、アピール効果は薄れてしまう。分かりやすいメニューを提示することはシェア拡大の条件にもなりそうだ。
【図・写真】東電は新電力に対抗し10種類以上のプランを用意(7日、東京都千代田区)
 
 
  日本経済新聞 朝刊,2016/01/08,ページ:3