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共通ポイント三つどもえ――加盟店、メリット値踏み、商品の動き把握、客層拡大に期待。

2014.08.18

 共通ポイントは利用する加盟店側にとっても集客の大きな武器だ。
 「支払いの細かい端数をポイントで払えて、特に消費増税後は便利。いろいろなお店で使えてポイントもたまりやすい」
 JR大崎駅(東京・品川)に近いローソンゲートシティ大崎店で買い物をした鈴木あやのさん(24)。普段から共通ポイント「ポンタ」がたまるカードの提示を欠かさない。ポンタは現在、ローソンやケンタッキーフライドチキンなど78社が導入、現在は全国2万3400店で使える。
 ローソンは9月から、従来の来店ポイントに代えて新しいポイント制度を導入する。来店頻度に応じて異なる特典を受けられるキャンペーンなどを実施。会員の来店動機につなげる。
 2010年3月にポンタを導入したローソンでは現在、月間2千万人が店頭でポンタカードを利用する。同社のマーケティング本部広告販促企画部の山本英之マネジャーによると、来店者の約半数がポンタを利用。「店頭でポンタを使う人は、使っていない人と比べて利用頻度や単価が圧倒的に高い」。女性の利用が多いのも特徴だ。
 ポンタを運営するロイヤリティマーケティングは実店舗を持たず、共通ポイント事業会社として「黒子」に徹するのみ。このため加盟店は独自色を出しやすい。加盟店はそれぞれ自社でポイントキャンペーンを実施し、2カ月に1度のペースで担当者が集まっては自主的に勉強会も開く。「自分たちのカードだとの意識が高いからこそ」(大手加盟店の担当者)
 一方の「Tポイント」陣営は、CCCが運営するDVD・CDレンタル店「TSUTAYA(ツタヤ)」のポイントカードを03年に共通化した。現在は7万5千店が加盟する。導入企業には小売りならファミリーマートやマルエツがあるが、最近ではメーカーも顧客ニーズを的確に把握するためポイントを活用する。
 ゴルフ用品大手のブリヂストンスポーツ(東京・品川)は11年にTポイントと提携。ゴルフボールやテニスラケットなど特定の商品を買って、パッケージに印刷された番号をTポイントのサイトで入力する。どの店舗で商品を購入してもポイントをもらえる。Tポイント情報を基に想定する顧客に商品が届いたかを分析。小売店のPOS(販売時点情報管理)では分からない同一商品のリピート率なども把握する。
 飲料メーカーのキリンビバレッジは12年1月から、都内などにTポイントがたまる自動販売機を約4300台設置した。Tポイントは購入動機になるほか、買い手の情報を分析することで場所や利用者層に合わせて自販機の中身を入れ替える。Tポイント・ジャパンの北村和彦副社長は「Tカードは汎用性が高く、今後は購買ポイント以外にも新たな利用価値を創出できる」と自信を示す。
 それでも楽天の共通ポイント参入は10月以降の小売店に大きなインパクトを与えそうだ。百貨店の大丸や松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングが楽天陣営に参加すると表明。大手百貨店の共通ポイント導入は初めてとなる。
 狙うは新規顧客の掘り起こしだ。400万人にのぼるJ・フロントの会員層は中高年が中心。一方、楽天9千万人会員は20~30代が厚い。J・フロント経営戦略統括部の梅村謙一郎スタッフは「ポイントの力で新しい顧客を呼び込む」と話す。今秋以降、購買動向データを分析し、集客策を講じる。楽天との相乗効果に加え、加盟店同士の連携にも期待しており、例えば車での来店者向けにガソリンスタンドとの共同販促なども検討する。
 同じく楽天陣営に加わるサークルKサンクスも若年層の集客効果に期待する。店頭で楽天クレジットカードを使うとポイントを2倍ためられるなど、「ポイントがたまりやすいという点を利用者に訴求したい」(同社)と期待を寄せている。
 
 
  日経MJ(流通新聞),2014/08/15,1面